ひとり月下で雄叫びを
先月の下旬、久しぶりに1人で外岩へ。
場所は仁淀LOVER 古代エリア。トポに載っていた写真を観て、強烈に心惹かれた課題「月下」1級…の下見。
前日があいにくの雨だったので湿気って登るどころじゃないだろうと思っていた。
案の定どの岩も湿気っていて登る気にならないものばかり。
しかしこいつは違った。
「月下」
かすかに緑がかったように見えるツルツルの岩面に、ポコポコとコブのようなホールドが散りばめられたスラブ。そのコブは一見どれでも使えそうな気がするが、触ってみるとエリア特有のツルツルとした岩質も相まり使えるホールドは限られている。
一目惚れだった…
正直スラブは苦手だ。今までも何度か外岩で経験はあるが、フォールした時に擦り下ろされる恐怖心が邪魔をし意識的に避けてきた。
しかし、他の課題が前日の雨の影響で登れない中、この岩だけは陽が当たり完全に乾いていて、まるで登ってくれと言わんばかりのコンディション。
さらにトポにラインが載ってないうえ、チョーク跡も無く、冒険心も掻き立てられる。
気がつけば下地にマットを敷きチョークアップを始めていた。
まずこの課題、どこを登れば良いかわからない。どのラインが正解なのかということでは無く、単純にどのホールドをどう使って登れば良いのかが見当がつかなかった。
トポの写真を頼りにスタートホールドは見つけたが、なかなかスタート位置につけない。ランディングが下がっている?
その後いろいろと試しているうちにスタートすることはできた。しかしホールドが細かいうえかなりスローピーでなかなか上部に入らせてくれない。
アテンプトを重ねるうちに絶望感が漂ってきた。
スタートが下がったから出来ない?
洪水の影響で角度が変わった?
そもそもラインが違う?
湿気ってきた?
実力不足?
…
そんなネガティブな思考が頭をよぎる中、それでも登りたい!という気持ちに変化は無かった。
そして時間をかけて対話をすればそれに応えるかのように最適な方法を教えてくれる。
核心となっていた中盤のムーブを解読することができた。そこからは悪いスタンスに立ち込み、ずり落ちないようにソールを信じてリップへの一手を出す。
リップの良し悪しは自分で確かめてみて欲しい。
リップを取った瞬間自然と声が出ていた。マントルを返した時自分以外の人間は居らず、いつものように祝福してくれる仲間もいない。しかし、いつも以上に満ち足りた気分だった。
岩と正面から向き合い、1対1で対話をすることができた。それが今回最大の収穫だったと思う。
素晴らしい時間だった、今度は仲間と行こう!